第14章 【第十講】間近な動物のにおいはかなり強烈
「逃げろ、委員長!」
土方が叫ぶ。
だが、逃げようとした近藤は転倒。トラに追い詰められ、逃げ場を失った。
「トラを挑発するんだ」
どうにか、トラを近藤から遠ざけなければと、土方は沖田に声をかける。
だが、その言葉を聞くまでもなく、○○は矢を射ていた。
矢はトラの眼前、近藤との間を抜けていった。
「こっちだ! トラ!!」
指が痛いが、そんなことは気にしていられない。
四射、五射と放つと、トラの視線は近藤から○○の方へと完全に向き直った。
「いけない。もう矢がない」
「いや、あれくらい距離があれば逃げられる。近藤さん、今のうちに逃げろ!」
「ダ、ダメだ……。足に力が入らねェ……」
どうにか上半身を起こした近藤だったが、足が竦んでしまい立ち上がれない。
「仕方ねェ、このまま俺達でトラを引きつけるぞ……」
危険だが、近藤が逃げられない今、自分達がおとりになるしかない。
そう思ったが、土方はある方法を思いついた。
「総悟、あの生肉のネックレス投げろ!」
団子は切らしてしまったが、まだ、トラに与えられる食糧があった。
トラが生肉にがっついている間に、近藤を救出して逃げおおせることが出来るはず。
だが、沖田に任せたことが誤りだった。