第14章 【第十講】間近な動物のにおいはかなり強烈
「だ、団子は?」
土方が風紀委員の生徒に問う。
理科教師・源外特製の『ネムネム団子』。動物を眠らせる効果があるその団子を、動物捕獲の重要アイテムとして生徒達は持っていた。
怖くて近寄れないと、彼等はそのアイテムを活用できずにいた。
代わりに沖田が二個三個と団子を放つ。
トラは食べたが効果はないようだ。次から次へと団子を放り、手持ちの団子を全てトラに与え、ようやく異変があった。
コロンとトラは地面に伏した。
「眠っ……た?」
トラは動かない。
張り詰めた空気が次第に溶け、皆の表情に安堵の色が広がった。
そんな中で、近藤はあっという間に調子に乗り、トラへと駆け寄った。
「記念撮影だ!」
委員長とは対照的に、副委員長は冷静だ。
「もうちょっとぐらい様子見たほうがいいんじゃねーか?」
源外が作った薬の持続時間は不明だ。いつ目覚めるか知れない。
「心配すんな」
「近藤さん、安心するのはトラを閉じ込めてからですよ」
「大丈夫だって」
土方や○○の気がかりなど、近藤はまるで意に介さない。
それに、まだ校内にはライオン等もいる。
リストによれば、逃げ出したトラは一頭ではない。
全て捕まえるまでは、安全などここにはない。
そう思った途端に、次なる危機が訪れた。
近藤の背後に、もう一頭トラが現れたのだ。