第14章 【第十講】間近な動物のにおいはかなり強烈
「これでよし」
ウサギと、先程捕まえたカルガモの親子を檻に戻し、○○は錠を下ろす。
「学校でこんなに動物飼育してたなんて、知らなかった」
そこにはたくさんの檻が並んでいた。
ほぼ、何も入っていない伽藍洞。まだ殆どの動物が捕獲されていない証拠だ。
「先週かららしいですよ」
朝方3Zの教室を訪れた際にハタが言っていたことを、山崎は○○に伝える。
○○と山崎は捕えた動物を戻しに来た。
近藤、土方、沖田の三人は引き続き昇降口付近で動物を捜している。
「まだいっぱい動物出歩いてるはずなのに、遭遇しないもんだね」
昇降口へと歩きながら、○○は周囲を見回す。
「人の気配を感じて、隠れてるんでしょうか」
あたりは静か、と思いきや、「わわわ!」という慌てふためく声が聞こえてきた。
あわあわと向かってくるのは、近藤、土方、沖田。
「何して――」
「いいから、来い!」
土方は○○の手を取る。
四人はそのまま廊下を走り、別棟へと向かおうとした。
だが、その行く手は悲鳴によって阻まれた。
悲鳴の主は、風紀委員の別動隊。
「ト、トラが……!」
悲鳴を上げさせた主は、武道場から○○が見た、あのトラだった。
土方の額から汗が流れる。
思わず握り締めた拳が、柔らかい何かを握っている。
(柔らかい……?)
自らの左手が、○○の右手を固く握り締めていた。
「おわぁ!」
慌てて土方は手を離す。
「なんで手ェ握ってやがんだ!」
「そっちが握って来たんでしょうが」
「バ、バ、バカ言うな。俺がお前の手なんか握るわけねーだろ!」
「言ってる場合じゃねーぞ!!」
近藤が声を上げ、土方は我に返る。
トラはジリジリと距離を詰めている。