第14章 【第十講】間近な動物のにおいはかなり強烈
「□□!?」
「土方くん?」
体にまとわりつく網を引っぺがしながら、○○は土方を睨む。
「何してんのよ。こんな網で捕まえたら、この子が怯えちゃうでしょ」
○○はウサギの頭を撫でる。
「何やってんです、土方さん。○○捕まえてどうするんです」
沖田は呆れたように溜め息を漏らす。
「ムリヤリ自分のモンにしても、○○の心はアンタのモンにはなりませんよ」
「何言ってんだ、てめーは!」
○○は二人の声など聞こえないように、ウサギと戯れている。
「こんな大人しい子、素手で捕まえられるでしょ。怖いの? 風紀委員、鬼の副委員長はウサギに怯える臆病者なの?」
軽蔑の眼差しを向けられ、土方は肩を震わせる。
(大人しいとか、知らねーし!)
ウサギはすばしっこい。
逃げて追いかけてを繰り返す時間など、土方にはなかった。
一網で捕えて、さっさと○○がいるはずの武道場へと行きたかった。それなのに、ああ、それなのに。
思うさま○○に撫でられた後、ウサギは○○の肩に飛び乗った。
「そいつァ、○○の配下か?」
沖田は大人しく○○の肩に乗るウサギに目を向ける。
「そんなわけないでしょ」
ウサギがついて来たことに、○○は武道場を出てから気づいた。
○○の横を走り抜け、ぴょんぴょんと先を行く。
追いつくことが出来ずにいたが、丁字でようやく止まってくれた。
捕えようとした矢先、その小さな体を目掛けてネットが降り注いだ。
ウサギをかばい、○○は自らが捕らわれた。
「危ないから、離れちゃダメだよ」
眉間を撫でると、ウサギは目を細めた。
その愛くるしい表情に、○○は微笑む。
「土方さん、口元緩んでますぜ」
愛くるしい小動物を愛でる愛くるしい○○を、土方は愛でる。