第14章 【第十講】間近な動物のにおいはかなり強烈
「オイ、トシ」
「なんだ? 近藤さんまで、俺が□□を助けに向かってるとか思ってんのか? 俺ァ風紀委員としての任務を――」
「何の話だ? あれを見ろ」
近藤は土方の背後を示した。
「ウサギか」
そこには淡い茶色を身にまとったモフモフの生物がちょこりと座っていた。
「あんなもん、そのうち誰かが捕まえんだろ」
小動物などいくら放っておいても危険はない。
土方としては、ライオンやトラなど、他の生徒の手には負えない動物を捕獲したい所存だ。
「しかし、放っておいたら危険だろう」
あの小さな体は、ライオン等には絶好の食糧。
こんなことで時間を使いたくはないが、ウサギを見殺しにしたとでも後で沖田に吹聴されれば、○○は土方を非難するだろう。それは避けたい。
「仕方ねーな。網貸せ」
沖田は捕獲用に持ち歩いていたネットを土方に手渡した。
逃げられないようにジリジリと近寄り、間合いを詰める。
今だ――
網を放ち、土方はウサギを捕まえた。
ウサギと、ウサギを抱えた女子生徒を。