第14章 【第十講】間近な動物のにおいはかなり強烈
○○が武道場を飛び出すよりも少し早く、3Zの生徒達は動物捕獲へと動いていた。
土方は風紀委員のメンバーと組になり、動物を探している。
本来ならば、共にいるはずの○○はいない。
(早く行ってやらねーと……)
今朝、○○は教室に現れなかった。
その理由は、土方には見ていたようにわかる。
朝練後にこの騒動が起こり、教室に向かえなかった。
○○が遅刻をする理由は他にない。
「目的地があるように歩いて行きますねェ、土方さん」
沖田は土方の後を歩いている。
周囲を警戒してはいるが、土方の足は明らかに先へ先へと急いでいる。
「目的は動物だ。他に何がある」
「奴さんがどこにいるかわかんねーわりには、足取りに迷いがねーように見えますけど」
「だからこそ、迷ってても仕方ねーだろ」
「そこ抜けたら、武道場ですね」
沖田は行く手を顎で示す。
昇降口を抜ければ、目の前は武道場だ。
「何が言いてェ?」
「○○、助けに行きてーんでしょ」
恐らく、○○は武道場にいる。
○○不在の理由は沖田にも容易にわかる。
ハタ校長の放送は武道場にも流れている。
獰猛な動物が闊歩し、銀魂高校の敷地内が危険地帯と化していることは○○の耳にも入っているはずだ。
一人で心細い思いをしていたらと思うと、土方は居ても立っても居られない。
「なんで俺がアイツ助けに行かなきゃなんねーんだ。大体、なんで武道場にいると思うんだ? ただの遅刻かもしれねーじゃねーか。ここんとこ毎日朝練してるからって、今日もそうとは限んねーだろ」
心中を気取られまいと土方は饒舌になるが、それは逆に○○への関心を示していた。
「ここんとこ毎日朝練って、俺は知りやせんけどね」
今日たまたまホームルームまでに現れなかったため、朝練をしていたのだろうと思ったまでだ。
呆れる沖田をよそに、土方はまだ一人でくどくどと喋くっている。