第13章 【第九講】どんな映画にも一箇所くらい見所はあるよね。ない?
「何、しっかり芝居してんだ! 監督見てねーし!」
土方は息を切らせる。
離れた場所でジャンプを読んでいた銀八に対し、勝男は「おいコラ! 担任!」と話しかけに向かっていた。
その間、手持ち無沙汰になり、沖田と○○は二人芝居を繰り広げていた。
「なんでィ。今からこの映画一番の見どころだってのに」
「映画じゃねーだろ! 台本あんのか!? 台本あんのか!!?」
「日本で一番有名な映画ですぜ。これから主人公を一人前のメス豚に仕立て上げて行くストーリーでさァ」
「知らねーよ、そんな映画!」
「私も知らないよ、そんな映画」
どうやら、○○と沖田で続きが異なる模様。
「もっと楽しい芝居がしたいなァ。そうだ」
○○は嬉々とした表情で土方を見上げた。
「今度は土方くんが相手役ね」
「なっ……! はァ!?」
見上げてくる○○の瞳が輝いている。
土方はたじろぐ。
――私、土方くんのことが……!
台詞だとしても、も、もしや、○○の口からそんな言葉が……
どぎまぎする土方をよそに、○○は芝居を始める。
『エイ●リアァァァン!!』
突然○○は土方にアッパーカットを食らわせた。
「何でロッ●ー!」
土方、10カウントにてノックアウト。