第13章 【第九講】どんな映画にも一箇所くらい見所はあるよね。ない?
そんなこんなで、オーディションが開始される。
「不合格や!」
「不合格や!」
「不合格や!」
ハム子、キャサリン、神楽と、監督の指示のもと演技をしてみせたが、問題が多発し不合格が続いた。
次はビジュアルで監督のお眼鏡に適った妙が指名される。
演技は上々だったが、阿音の妨害により芝居が中断。取っ組み合いの喧嘩となった。
続いて、喧嘩を止めに入った美少女、九兵衛に目を留めた勝男だったが、肩に手を置いたことでぶん投げられ、講堂の壁へと激突した。
「監督!」
「大丈夫でっか!?」
撮影スタッフが慌てて監督の元へと駆け寄る。
勝男の治療のため、オーディションは暫し中断。
その様を見ている一人の男は、次第に不機嫌になっていた。
――あの監督の目は節穴か?
軽く足を踏み鳴らしながら、土方は勝男を睨め付ける。
監督は妙に声をかけた。続いて、九兵衛に声をかけた。
自身の映画のヒロインには、素人でも美少女を起用したいものだろう。
――何で真っ先に□□に声かけねーんだ。
恋する男子高校生には、恋の相手がクラス一、校内一、いや世界一の美少女にも映る。
それに、○○は案外、映画に出たいと思っているようだ。
真っ先に声をかけるべきだろう。そして、主演の女子としてとっとと決定しやがれ。
そうしたら、相手役は俺……
いかんいかんと、土方は首を振る。
銀幕デビューなどしたくはない。
だが、もし○○が主演になり、相手の男子とキスシーンでもあろうものなら……
うがああ! と悶絶しそうになるのを堪え、土方は○○に視線を向ける。