第12章 【第八講】発売から随分経ってるから(略)作品がわからない
「近藤さーん、総悟ー! ちゃんとやってるー?」
場所が男子トイレのため、○○は表から彼等に声をかけた。
「あ、○○さん。勿論、ちゃんとやってますよ」
予想に反し、姿を現したのは山崎だった。
「何だ、ちゃんと山崎もいるじゃない」
「山崎、テメッ! 掃除サボってミントンやってんじゃねェ!!」
「ヒッ!」
土方に胸倉を掴まれ、山崎は顔を青ざめさせる。
「ちょっと、ミントンじゃないでしょ! ちゃんとモップ持ってるじゃない!!」
山崎の手に握られているのはグリップではなく、木製の棒。
その先端にあるのはガットではなく、モサモサの毛だ。
土方は眉間に皺を寄せる。さっきまで、確かに山崎はミントンに勤しんでいた。
「おお、○○!」
頬を引きつらせる山崎の背後から、近藤が顔を覗かせた。
笑顔の近藤は○○の背後に回ると、その背を押した。
「見てくれ、ピカピカだぞ!」
男子トイレへと、近藤は○○を誘導する。
「見てくれって、近藤さん……」
掃除中で誰も使用していないとはいえ、踏み入るには抵抗がある。
それでも中に押し込まれた○○は、その輝きに目を丸くする。
床も洗面台も便器もピカピカだ。
中でも目を引いたのは、シャツの腕を捲くり、汗を拭う沖田の姿。
ゴム手袋を嵌め、雑巾を手にしている。
普段の腹黒沖田とは程遠く、妙に爽やかで輝いている。
「総悟、真面目に掃除してたの?」
「何でィ、その言いぐさ」
沖田はムッとした表情を見せる。
「誰かさんがサボって出てっちまったもんで、三人で分担して掃除したんだぜィ」
沖田の視線は土方に注がれている。