第4章 文武両道
「自分で言うのはあれだけど私は勉強も運動もできないわけじゃなかった」
「むしろ人よりできてたよね」
「中学の時はさそれが当たり前でそういう奴らが集まる場所に私もいて競い合ってた。でも今は違って、ずば抜けて何かができるやつ、才能がないと諦めるやつ、上の者を憎くて蹴落としたくなるやつ、なんでもそつなくこなすやつ、色んな人に出会った」
文武両道に見える彼女の隅で昔の塞ぎ込んだ彼女の姿が見えた気がした
“上の者を憎くて蹴落としたくなるやつ”この言葉にもなにか意味がある気がした
「悩みあんの?」
「…ない」
「言ってみ」
「…文武両道って私なんかが言われていいのかな?私は…」
「いいでしょ、ゆいながたくさん努力してきた結果だよ。他人からそう思われるのはゆいなを認めてくれてる証拠、胸張りな百瀬ゆいな」
頭を撫でた
「俺は知ってるよ、ゆいなが努力してたこと。殺せんせーのおかげでゆいなは意欲取り戻して誰よりも努力して上にのし上がってきたじゃん。
俺はそんなゆいなが好きだよ。父親達に言われた言葉が頭によぎるかもしれない、それでも這い上がれ、ゆいなも俺もどん底経験してんの、もう怖いもんなんてないっしょ」
俺らはどこだってやっていけるよ
そういう思いを込めて手を差し伸べると
その手を握ってきた
「…ほら、やっぱりヒーローじゃんか」
「どこが」
「私の背中を押してくれるところ」
「そんなのみんなやってくれる」
「カルマが1番気づいてくれるじゃん」
「ねぇ俺はゆいなの彼氏じゃないよ」
「知ってる」
「俺がゆいなのこと好きだって告白したの忘れたの?」
「忘れてない、返事しなきゃいけないよね」
「俺に気を使って返事するのなしね、俺はゆいなの気持ちが知りたいから嘘ついたら捻りつぶす、ゆいなが後悔しない道選びな」
「カルマ……大人になったね」
「当たり前じゃん、だって俺失恋してもゆいなと仲良くなるつもりでいるし怖いもんないし」
「そっか…ちゃんと自分の気持ちに向き合うから…いっぱい待たせちゃうかもしれないけど…けど…待っててほしい」
「うん、いつまででも待つよ、直接聞けるまでね」