第9章 宮侑
次々と選手たちは着替えるため更衣室に戻って行く
その間に荷物の片付けをしていた
涙を流して前を向いた
悔しいけど烏野は確かに強かった
いい試合だった
どっちが勝ってもおかしくない試合だったし!
みんなかっこよかったし!!
でも、でも
「悔しいなぁ…」
「ゆいな」
「侑…」
侑は荷物を持ち上げて人気のないところに連れて行った
「侑?」
「ゆいなの目赤いな」
「私が泣くのおかしいよね、ただのマネージャーなのに」
「そないなことない、俺もっと頑張らなあかんなぁ。今度はゆいなを笑顔にさせなあかんもん」
「うぅ…もう十分なくらいだよ。頑張ったよ、すごかったもん」
「頑張るで、そんで北さんに自慢してもらうんや。あの人笑ってたんよ、俺は笑ってはるところ全然見てなかったで新鮮やったわ」
「そっか、北さんに自慢されなきゃいけないもんね」
「おん、やからゆいなずっとそばにいてくれへん?ゆいながそばにおってくれたら何でもできる気がすんねん」
「うん、そばにいる」
笑顔を見せると侑の顔が近づいてきた
チュッと唇が触れ合うと目が合って
そのまま離れなかった
侑は私の横から前へと移動して私の頬を離さなかった
「あつ…む…だめ、見られちゃ…」
「こんなところ誰も来いへん」
「北さ…に怒られちゃっ…」
こんなところでするなって
みんな探してるかもしれない
「わかっとる。それでも離れたないねん」
甘えたな声に気が緩んで許してしまう私が憎い