第27章 猫舌の君にはまだ早い《後編》◉天喰環※
愛らしい唇からふぅふぅと息がこぼれる、直視できずに中身を思い切り流し込むと喉が焼けるように熱くなった
「冷たい物の方がよかったよね、ごめん・・」
テーブルに置かれたマグカップ、部屋に入るなり彼女がお湯を沸かしたのは、おそらく時間を稼ぐためだ
「季節感なさすぎるね、ごめんね」
「いや、落ち着くよ、ありがとう」
無意識のうちに相手の行動理由を探ってしまうのは職業病、というよりは学生時代からの鍛錬の賜物なのかもしれない
時間を稼ぐ理由として考えられるのは二つ、これから起きる事に対しての緊張と警戒、そして俺との交際について彼女の意志が定まっていないからだ
キッチンを背にした彼女は目も合わせず腰も下ろさない、張り詰めた緊張感が彼女の挙動をぎこちなくさせている
「それも可愛い・・身が持たない・・」
呻いて手で覆うと狭まった視界、つられるようにおどおどと視線を落とした彼女は冷凍庫を開けると氷を二つカップへ落とした
「あ、子供みたいだよね、恥ずかしい・・」
まだ全然熱いや、浮かんだ氷が瞬く間に小さく溶ける
諦めた彼女はそれをテーブルに置くと意を決したように俺の隣にちょこんと腰掛けて
いつでも押し倒せる、そう思った途端胃がぎゅるぎゅると痛んだ
「熱いの苦手だって、知らなかった」
図書室は飲食禁止だったから、すでに半分以上飲み終えている俺のカップを見遣ると彼女が目を丸くする
「天喰くんは全然平気なんだね、すごい」
「ああ、ファットに鍛えられたのかもしれない」
事務所のデスクまでたこ焼きの鉄板になってるんだ、驚いた彼女が無邪気な声を上げて、まるで図書室で過ごしていた時みたいだ
「慣れたら治るものなのかなぁ、」
「どうだろう、油断すると今でも火傷するよ」
数日前から痺れている舌先、確かめるように軽く突き出すと固まった彼女が思い切り視線を泳がせて
そんな顔されたら堪らない、勝てる一瞬を逃さない力も俺はどうやら培っていたらしい
「・・まだ、ひりひりする」
上がり続ける体温に朦朧とする一方で、自分でも驚くほど頭の冴えていく感覚
俺はここを、逃がさない
「めぐ、・・治、して」