第27章 猫舌の君にはまだ早い《後編》◉天喰環※
「そ、そうだよね、ごめんなさい・・っ」
私は何を言っているんだろう、恥ずかしくて情けなくて彼の顔を見られない
さよならを伝えておいて思わせぶりな私の態度を考えれば当然だ、この期に及んで私はまだ口実ばかり、逃げ道ばかり、本当に本当に情けな
「・・っ!、薬師さん・・!」
駆け出すように立ち上がった彼が、私を強く抱き寄せる
こぼれた雫に優しく触れた指先、大きな手が熱くなった頬に添えられて
さっきまで震えていたその掌が、私の逃げ道をあたたかく塞いでいく
「な、泣かせて、しまった」
「違うの、ごめ、なさ・・っ」
———環はね、腹括るとすっっごいんだよね!
———私たち三人の中で一番意志が強いの、
意外だよね?ね?
———それ言いにC組の寮まで来たの・・!?
今にも泣き出しそうな声、私よりもずっと辛そうに顔を歪めているのに、力強い腕は少しだって震えていない
格好悪くて格好いい、本当にずるいよ、
「俺が不甲斐ないから・・君を、泣かせてしまった」
小さく噦りあげる私の額に優しい口付けが落ちる、愛しさを隠さない手がゆっくりと髪を撫でて
「誤解させるような言い方をしてごめん・・!」
ちゃんと伝えるから、聞いてくれ、縋るように強く抱きしめられると耳に響いた胸の音
肩に触れた白いマント、すっぽりと腕に包まれ見上げた目線の先、街灯の光は少しも見えなくなった
「・・まだ、君と離れたくない、だから」
切なく揺れる瞳の中に見える確かな熱、
触れ合った鼻先から流れ込んだそれが私の身体を火照らせて、もう逃げられないと本能が叫んでいる
「天・・喰、くん」
「二人きりで起こりうる、あらゆる出来事を」
掠れた声が静かに響くと触れ合わせるように重ねられた唇、震えているのはもしかしたら私の方かもしれない
「・・すべて承知の上で、部屋に上げてくれないか」