第27章 猫舌の君にはまだ早い《後編》◉天喰環※
「・・今週試したものを、記録してる」
「これって虫、だよね・・?」
「ああ、加熱処理した物が売ってるんだ」
毒性を再現できて良かった、エビみたいな味だったし、事典の目次をコピーした白い紙にマーカーを滑らせると彼がハッとしたように顔を上げた
「ひ、引いた・・!?」
「ううん、すごいなって思ったよ」
粉末にしてカプセルにしても再現できるのかな、首を傾げて目を合わせるとじわりと染まった目元、あの時初めて、もしかしてって思ったの
「食べるの、嫌になったりしない、?」
「昔はそう思う事もあった、でも今はどんな物でも、試したい」
強くなりたいから、そう言って静かに視線を落とした貴方を見て、なんて格好いいんだろうって、そう思ったんだ
「む、無理だ・・!君の刺激が強すぎる・・!」
敵うはずがない・・!、小さく座り込んだ彼がブロック塀に額を擦り付けている
同一人物とは思えないあの日の横顔、ふいに思い出された表情にどうしようもなく胸が騒いで、私はまだ上手く笑えないでいる
「ああ、脈が止まるかと思った・・」
わなわなと口を震わせながら小刻みに震えて、目が合った途端両腕で顔を隠してしまう
つられて火照った顔を背けるように、私は地面に視線を落とした
「あの・・うちで少し、休んでいく・・?」
さっきの出血も心配だし、天喰くんがもし良ければだけど、私はまだ大丈夫だから、
素直とは程遠い言葉がいくつも口から流れていく、自分を嫌悪しながらぎゅっと鞄の紐を握りしめると私は浅く息を吐いて
まだ一緒に居たいから帰らないで、その一言を紡いでしまったら、きっと止まらなくなってしまうから
「お腹は、空いてないと、思うけど・・」
「・・それは、駄目だ、」
そんな理由で上がるわけにはいかない、目を泳がせながら彼が首を横に振る
「そんな事、したくない」
「・・っ」
苦しげに眉を顰めた天喰くんが私を見上げて、音が消えて真っ白になった狡くて弱い心に自分の鼓動だけが響いた