第27章 猫舌の君にはまだ早い《後編》◉天喰環※
「おつかれさまでした、大食いヒーローさん」
「今ならどんなヴィランに遭遇しても・・大丈夫だ」
胃をさすりながら彼が大きく息を吐く、居座る目的ならとドリンクバーを勧めても「お店に悪いから」と彼は料理を注文し続けて
「それにドリンクバーだと・・君と話すタイミングが無い」
「本当にもう・・!家に胃薬あったかなぁ・・」
「いや、これ位なら大丈夫だ」
申し訳なさそうに視線を落とした彼の足が突然止まる、荷物持つよ、そう言っておどおど差し出された手をやんわり遠慮すると小さく鼻を啜る音が聞こえてきた
「た、頼りない・・よな、ごめん」
「そういう意味じゃないよ、!?」
「役立たずで大食いの・・ただのストーカーだ・・」
「っふふ!」
確かに学生時代よりも更に食べる量が増えていた気がする、個性の関係上食べる量は多ければ多いほど良いと話していた事を思い出して私は懐かしい気持ちになった
「っ・・危ない、」
ふらりとよろけた自転車から守るように天喰くんが私の肩を抱いて
見上げて目が合うと焦った彼は瞬時に数歩後ずさった
「ご、ごめん・・!触ってしまっ、た」
数ヶ月見ない間にまた背が伸びたかもしれない、ヒーロー科生の中では比較的華奢に見える彼が実は全然華奢ではない事を思い出して顔が熱くなる
「な・・そんなにじっと見ないでくれ・・!」
顔を隠す両腕がぎこちなく動いて、思わずまた吹き出すと彼の眉がへなへなと下がる
一番上の本棚に手を伸ばした私が脚立から落っこちた時も、全く同じ表情をしていたっけ
———環はね、脱ぐとすっっごいんだよね!
———通形くん、それ言いにC組まで来たの・・!?
逞しい身体は私を抱き留めてもびくともしなくて、普段の気弱な彼からは想像できないくらい頼もしくて、気遣う優しい声は甘くて、それで、ああもう・・!
「格好悪くて格好いいなんて、ずるいよ・・」
「か、・・っ!?!?」
こんなに好きなのが腹立たしい、帰らないで欲しいと当然のように思っている自分が
「頼りないなんて、思ったことない」
自分の殻を破り努力し続ける、貴方が居たから私は頑張れた、ずっと私のヒーローだった
「天喰くんは、世界で一番かっこいいもん」
フリーズしたまま鼻から血を流す彼を振り切るように、私は火照った顔を隠しながら横断歩道の上を走った
