第27章 猫舌の君にはまだ早い《後編》◉天喰環※
がやがやと混み合う店内、空になった皿を幾つか重ねながらじっとその姿を盗み見る
細くか弱い腕であんなに沢山運べるのだろうか、はらはらと見守る俺の心配をよそに彼女はてきぱきと仕事をこなして
「めぐちゃん、12卓のお客さんなんだけど」
「はい、?」
「さっきからオレの事、めちゃくちゃ睨んでくる」
色とりどりのメニュー画面、海鮮トマトパスタの画像を押しながら厨房の入り口に視線を送る
何なんだあいつは、さっきから彼女に馴れ馴れしく話しかけて・・!
それだけじゃない、
めぐ、ちゃ・・ん・・!!?
重罪だ・・紛うことなき重罪・・!
「もう、送ったらすぐ帰るって言ったでしょ」
可憐な制服姿に顔が熱くなる、淡い色のシャツに短いネクタイ、控えめなフリルの付いた白い前掛けがあまりに眩しくて目眩がする
「じょ、状況が変わった・・、警護を」
あの男は君の何なんだ、見上げたものの直視できずに手で顔を覆うと彼女が呆れたように息を吐いた
「これじゃストーカーだよ、天喰くん」
「っ、ス、ストーカー・・」
「いっぱい注文してくれるのは助かるけど・・」
相変わらず沢山食べるね、すごい、そう言って感心したように伝票を眺めた彼女が、追加のステーキと唐揚げを静かにテーブルに置く
「二つ上の先輩なの、いい人だから睨まないで」
「あいつは絶対・・君に気がある・・」
「そんなんじゃないってば、もう」
これ食べたら帰ってね?、海鮮パスタを追加したことをまだ知らない彼女が口をへの字に歪ませて俺は咄嗟に目を逸らした
「お済みのお皿お下げしますね」
「そんな破廉恥な格好で・・敬語なんて・・」
「いい加減にしないと怒るよ」
顔を顰めた彼女が丸いトレイを抱え去って行く、厨房入り口の注文モニターを確認すると驚いた表情で此方を睨んで
「う゛っ・・心臓に、悪い・・」
ぎゅうっと鳴る胸を掴んでうずくまる、
できるだけ早くまた俺の所に来てもらわなくてはとナイフとフォークを手に取って
熱いものを食べるのには慣れている、鉄板の上のそれを四等分すると俺は素早く口に放り込んだ