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あなたがたった一度の恋でした【鬼滅の刃】

第8章 (かわいすぎる……)※義勇視点







その様子は、なぜ自分がここにいるのか桜にも分からないように見えた。



「なにか急ぎでもあったか?」

「いえ、別に、なんでも…………そう!稽古をお願いしようかとっ、」



慌てふためきながら出てきた理由が嘘っぽい。

桜の動揺した態度を見るかぎり、本人も苦しい言い訳だと認識しているのかもしれない。

義勇からすれば継子が師範の家に来ることなどおかしくもなんともないことなので気にしてもいないのだが。

むしろ、用がなくても桜なら大歓迎だった。



「でもお疲れですよね。明日出直してきます!」



失礼しました、とお辞儀してそそくさと帰ろうとする桜の腕を義勇は掴んで引き留めた。

帰るという桜をなぜ引き止めてしまったのだろう。

とっさに出てしまった手を引っ込めることなんでもうできるわけもなく。

キョトンとする桜に出たとっさの台詞が、



「ーー茶でも飲んで行くか?」



だった。

俺はなにを言ってるんだ……

そう思っても口から出てしまった台詞は巻き戻すことができない。

二人して変な空気になってしまったところで、桜が控えめに言った。



「……お邪魔します」



普段なら、稽古あとなどにお茶を勧めても用がなければ多忙な義勇を気づかって、さっさと帰っていた桜の変化に少々戸惑う義勇だが。

その顔には誰にも分からないほどの小さな笑みが浮かんでいて。

任務で少々疲れ気味だったのが、桜の反応一つでそれがぶっ飛んでしまうとは、我ながら単純だと義勇は自分でも思った。






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