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あなたがたった一度の恋でした【鬼滅の刃】

第67章 私に構わず禰豆子のところに行きなさい






だが、実弥の邪魔をさせまいとする小芭内の肘鉄は、炭治郎を庇って覆い被さってきた桜の背中にめり込んだ



「っ・・・・・・!」

「!?春空!?」



力の限り肺を押し潰されたような感覚に、一瞬息が止まった気がした。

小芭内本人も、まさか桜が出てくるとは思わず焦りや驚きで動揺しているのが見える。


柱の中でも小柄な小芭内だが力の強さは男の人で、その衝撃に桜の体は炭治郎の上に倒れ込んだ。



「桜さんっ!!!」



肩越しに炭治郎は見上げ声を上げた。

遠くでは義勇が切れ長の目を大きく開け、その様子を食い入るように見ていた。

桜の声にならない悲鳴に義勇の表情に陰が射し、隣に立つ杏寿郎もまた険しい表情をしている。



「桜さん………」



また庇われた。

それも、今度は身を挺したことで彼女は肉体的に苦しんでいる。

それでも小芭内はやめるつもりはないらしい。

禰豆子の本性を暴く機会を妨げようとする桜もまた実弥や小芭内にとっては邪魔者なのだ。



「出てこい鬼ィィ!!お前の大好きな人間の血だァ!!」



その間も、実弥は外の出来事など気にもせず禰豆子に迫り続けた。

禰豆子も助けたいが桜も放っておけない。

炭治郎が板挟みになった状況に戸惑っていると、スッと桜が人差し指を禰豆子に向けた。



「……っ……っ……!」



桜は肺を圧迫されているせいで声が上手く出ない。

だが、口をパクパクさせて何を伝えようとしているのか炭治郎は匂いで気付くことができた。


『私に構わず禰豆子のところに行きなさい』


そう言っているのだと。

それでも炭治郎が躊躇っていると、その視界の端に義勇の姿が映った。

桜を押さえつけていた小芭内の左手首を義勇が掴み上げる。



「!冨岡、なんのつも………っ」



凄んだはずの小芭内は、逆に義勇の表情を見て身を固くした。

無の表情ながらその瞳の奥には怒りの色を宿し見下ろしてくる義勇に小芭内はゾクリと背筋を震わせる。

こんな義勇は見たことがない。

射ぬかれそうなその目付きに、掴まれている手首を力一杯振りほどくと小芭内は桜から離れた。




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