第8章 (かわいすぎる……)※義勇視点
任務を終え義勇は帰路についていた。
もうすぐそこだと、目と鼻の先、屋敷の門前にたたずむ見知った背中を見つけた。
なぜ彼女がここに、と思う間に義勇は自然とその名前を呼んでいた。
「桜?」
「冨岡さん?」
振り向いた桜は満面の笑みを浮かべて駆け寄ってきた。
疲れも一瞬で吹き飛んでしまうような、まぶしい笑みを浮かべて。
「おかえりなさい、冨岡さん」
「……………」
まるで出かけ先から帰宅した夫を出迎えるような台詞を言われ、愛らしい笑み効果も加わり照れくさくなった義勇は思わず桜から顔をそらせてしまった。
(かわいすぎる……)
そのまま抱き締めたくなったのを我慢した自分をほめてやりたいくらい絶大だった。
惚れてしまうと些細なことでさえこんな風に自分を変えてしまうのだから驚きだ。
義勇は気持ちを落ち着かせてから桜に向いた。
「どうした、こんな場所で」
「こんな?」
稽古や任務の同行時の迎え以外に桜が義勇の屋敷に来るのは珍しかった。
それを本人に聞くと、なぜか桜はハッとして慌てていた。