第66章 畏れながら、この場でお館様に申し上げたいことがございます
「畏れながら柱合会議の前にこの竈門炭治郎なる鬼を連れた隊士について、ご説明いただきたく存じますがよろしいでしょうか」
実弥の思うところは、当然この場にいるほとんどの柱が思うことでもあった。
耀哉の口からは、きっと正当な言葉と然るべき対処が述べられると、ほとんどの者が思っていた。
「炭治郎と禰豆子のことは私が容認していた。そして皆にも認めてほしいと思っている」
ところが、返ってきたのは驚くべき内容で柱には信じがたいものだった。
耀哉の言うことならば本来はお言葉のままにと言いたいところだが、事が事だけに拒絶する者のほうが圧倒的に多いのは変わらない。
特に強く否定的なのが行冥、天元、小芭内、実弥だ。
「鬼を滅殺してこその鬼殺隊。竈門、冨岡、春空の三名の処罰を願います」
「では手紙を」
「はい」
実弥がそう申し出たところで耀哉は手紙を出すように、ひなきに伝えた。
ひなきが懐から手紙を取り出し広げる。
「こちらの手紙は元柱である鱗滝左近次様から頂いたものです。一部抜粋して読み上げます」
その内容は、炭治郎が禰豆子と共にあることへの許しを請うもの、禰豆子が強靭な精神力で理性を保っていること、飢餓状態でも人を喰わなかったこと、またそのまま二年以上の歳月が経過したというものだった。
「“にわかには信じがたい状況ですが紛れもない事実です。もしも禰豆子が人に襲いかかった場合は、竈門炭治郎及び鱗滝左近次、冨岡義勇が腹を切ってお詫び致します”」
「!!」
「!!」
最後の文面に炭治郎と桜は驚きに目を見開いた。
と同時に二人の視線が義勇に向けられる。
桜は知らなかった。
炭治郎と出会ったあとで、義勇と左近次との間で密かにこんな約束がされていたことを。
ショックだった、除け者にされたようで、置いてけぼりにされたようで。
義勇は、一緒に責任をとると桜が言った時にうっすらとだけど笑ってくれたのに。
あの時、すでにこうすることを義勇は決めていたのだろうか。
桜はキュッと口を噛み締めた。