第62章 謝罪さえ受け入れてもらえない
ごめんなさい、それさえも言わせてもらえない関係にまで落ちてしまったことに目の前が真っ暗になった。
謝罪さえ受け入れてもらえない。
もう、私はしのぶちゃんの親友でいられないんだ。
「私は桜さんに謝罪を求めていませんよ」
「……そう、だよね…………」
私は、しのぶちゃんのことも鬼殺隊としても、裏切ったことになる。
見放されたとしても仕方ないのかもしれない。
「そんな簡単に謝罪するほど、桜さんはご自身の行動に誇りを持てていなかったわけではないでしょう?」
「…………………?」
「信念の元に動いたのなら謝る必要はありませんが、簡単に謝ってしまうような軽率な考えなら、始めからしないほうが賢明ですよ。冨岡さんのためにも、あの二人のためにも」
「しのぶちゃん………」
「大変なのはこれからですよ。他の柱も彼らのことを快くは思わないでしょうから」
「そうだね………」
確かに大変なのはこれからだ。
でも今の私はしのぶちゃんとの良い関係を続けられることの嬉しさのほうが勝(まさ)っていた。
「しのぶちゃん、私のこと怒ってないの?」
「もちろんです」
「じゃあ冨岡さんのことも許してくれるよね!?」
「それとこれとは別の話です」
「………………………」
なんとも温度差の激しい声と言葉だろうか。
しのぶちゃん、なんで冨岡さんには厳しいんだろ。
まさか、嫌い嫌いも好きのーー
「これ以上言うと突きますよ???」
「っ!?」
なぜ心の声が!?
しかも、今までで一番低くてドスの効いた声だった。
「それにしても悲しいです。私と桜さんの仲というのは、そんな簡単に壊れてしまうようなものだったなんて」
「そんなことは………っ」
「嘘ですよー」
冗談交じりにしのぶちゃはそう言うと、今度こそ行ってしまった。
しのぶちゃんの言うとおり、私は軽い考えで二人のこと助けたわけじゃない。
禰豆子ちゃんの人間らしさを見てしまったから。
しのぶちゃんも他の柱だって、禰豆子ちゃんの優しさに触れたら変わるよ。
禰豆子ちゃんは醜い鬼とは別だって。