第62章 謝罪さえ受け入れてもらえない
カナヲちゃんが去ったから私も冨岡さんの所へ戻ろう。
そう思い、振り返った先の茂みがガサリと音を立てた。
鬼である可能性も考えて私が柄に手をかけたと同時に、しのぶちゃんが現れた。
「しのぶちゃん………」
「一緒ではないんですか?」
しのぶちゃんはキョロキョロと誰かを探している。
(どっちのことだろ?)
禰豆子ちゃんたちのこと?
それともカナヲちゃん?
しのぶちゃんが誰のことを聞きたいのだろうと思い悩んでいると、
「指令のあった二人です」
「禰豆子ちゃんたちなら隠にお願いして本部に連れていってもらったよ」
「そうですか」
返事をしながら、再びキョロキョロとしのぶちゃんは辺りを見回し始めた。
次が誰かは、すぐにわかった。
「カナヲちゃんは森の中に戻っていったけど……」
「ありがとうございます。私はカナヲを探しに戻ります。冨岡さんもそろそろ来ると思いますよ」
「うん」
そういえば、しのぶちゃんと冨岡さんは今までずっと一緒だったんだろうか。
私が禰豆子ちゃんたちの援護に行く姿を、しのぶちゃんはどんな思いで見てたんだろう。
鬼殺隊としての役目を守ろうとした、しのぶちゃんに楯突くように動いてしまった私のことを。
普段と変わらない態度だから、怒っているのか、気にしてないフリをしているのか、その表情からは読み取ることはできない。
確かなのはーーー私は親友を裏切った。
「しのぶちゃん!」
去っていこうとするしのぶちゃんの背を私は呼び止めた。
「あの……」
しのぶちゃんに謝らないと。
そしたらまた、元の仲に戻れるよね。
「私、ごめ………
「謝らないでください」
ぴしゃりと言葉を遮られてしまって、私は硬直した。