第61章 守ってくれて、ありがとう
見ると禰豆子が『付いて来て』といわんばかりに引っ張っている。
「どうしたの?」
竹ぐつわで会話をすることができない禰豆子に、桜は手を引かれるままに付いていく。
連れて来られたのは大きめの木箱の所だった。
「これは?」
なにをするものだろうと桜が思っていると、禰豆子がその箱をの扉を開け自らその中へ入っていく。
(か、カワイイ……!!)
そしてその中にちょこんと収まってしまった。
「そうか、そこなら安全だね」
箱の中なら日差しを遮断してくれる。
まるでお人形さんのように可愛らしい禰豆子の姿にほっこりしていた時だった。
炭治郎を背負った隠がやって来た。
「春空様。私たちがお運びします」
「お願いします」
桜は扉を閉めると隠に禰豆子を預けた。
炭治郎と禰豆子が運ばれていくのを見送ってから、ふとカナヲがいないことに気付いた。
(いつの間に………)
任務が中断になったとはいえ撤収が早すぎる。
しのぶの元に戻ったか、周辺の鬼の捜索に戻ったのか。
どこまでも指令に忠実なカナヲに桜は苦笑をもらした。
本部が禰豆子を連れ帰るということは、そうするだけの情報が耀哉の所にあるということだ。
殺すつもりならわざわざそんな指令はおりない。
一先ず安心するところだが、心の底から喜べないのは癖の強い柱の存在があるからだ。
彼らの鬼に対する執念はどの隊員よりも強い。(だからこそ鬼殺隊の最高位にまで昇り詰めることができるのであろうが)
そう簡単に彼らが禰豆子の存在を許してくれるとは思えなかった。
そして鬼を庇ったことに対する隊律違反についても何かしらの処罰があるに違いない。
桜が刀身をゆっくり鞘に戻す、納刀時のカチンと言う音がやけに響いた。