第61章 守ってくれて、ありがとう
時を同じくしてその伝令は桜とカナヲにも届けられていた。
〝炭治郎及ビ鬼ノ禰豆子!拘束シ本部へ連レ帰レ〟
「!」
「…………」
冷戦状態だった三人の頭上を舞い飛ぶ鎹鴉を、桜とカナヲが見上げる。
〝炭治郎、額ニ傷アリ!竹ヲ噛ンダ鬼、禰豆子!〟
「あなた、禰豆子ちゃんていうのね」
桜が確認するように尋ねると禰豆子がコクリと頷いた。
「禰豆子ちゃん。守ってくれて、ありがとう」
桜は、守ってくれたたことへの感謝を伝えると、禰豆子は目を細めて嬉しそうに笑った。
こうしてみると、禰豆子が鬼だなんて信じられない。
この子のような鬼だらけなら、人との共存も可能ではないのだけれど。
桜は禰豆子の頭を撫でながらそう思った。
本部ではどんな処罰がくだされるのだろう。
この子にとって良い未来へと繋がる判断がくだされればいいのだけれど。
(さて、どうやって禰豆子ちゃんを本部に連れて行こう……)
もうすぐ朝がくる。
山の中腹部であるここはそう日差しがさすことはないだろうが、山を降りればそうはいかない。
鬼は日の光を浴びれば塵となり消えてしまう。
どうやって本部まで連れて行こうかと桜が頭を悩ませているとグイグイと羽織の裾を軽く引っ張られた。