第60章 冨岡さんの言う通り、この鬼は他の鬼と違う
けれど、それをどう説明すればいいのか口下手な義勇は思い悩んでいた。
そして、それを無視されていると思ったしのぶと声は少々怒気が含まれていた。
しのぶの無言の圧力に押し負けた義勇が口を開く。
「あれは確か二年前のこと……」
「そんな所から長々と話されても困りますよ、嫌がらせでしょうか。嫌われてると言ってしまったこと根に持ってます?」
「っ、」
別にそんな小さなことを根に持っているわけではないが。
義勇の性格だと昔話をはしょって簡潔になんて器用なことができないだけだ。
(すればするだけで言葉足らずで誤解を与えかねない)
結果、しのぶには嫌がらせだと捉えられてしまう。
業を煮やしたしのぶがタックルのような体勢の体にグッと力を込めると右足の、草履の踵から仕込み刃が勢いよく飛び出した。
「!!」
しのぶがさらに勢いをつけて右足を振り上げ義勇の額を狙った。
その時ーー
〝伝令!伝令!〟
側の枝にとまっていた鎹鴉の存在に、しのぶは振り上げた足を、義勇の額に突き刺さる寸前でピタリと止めた。
〝炭治郎・禰豆子、両名ヲ拘束!本部へ連レ帰ルベシ!!〟
「!!」
「!!」
その指令に驚く義勇としのぶ。
その場で理由は語られないが本部からの指令なら従わないわけにはいかない。
二人はどこかで対峙しているであろう継子を迎えに行くため、一時休戦し離れると同時に日輪刀を納刀し山奥へと消えていった。