第60章 冨岡さんの言う通り、この鬼は他の鬼と違う
これでは、いつまで経っても堂々巡りで任務を遂行することができない。
カナヲは柄を強く握り締めると構え直した。
「花の呼吸 弐ノ型 御影梅」
術者のカナヲを中心に剣を回転させるようにし、自分が籠の中に入ったような形を作り出すことで、それを避けた桜をその場から離すことに成功したカナヲは、その足で炭治郎が消えた方へと走っていった。
それに気付いた桜が慌てて追いかけようとするが、今度はカナヲの技に行く手を阻まれてしまう。
「時の呼吸 伍ノ型 桐一葉・振臂一呼(きりひとは・しんぴいっこ)」
桜は強力な風でカナヲの技を相殺して道を切り開くと急いでその後を追った。
カナヲも身軽だから移動が早い。
すでにその姿はそこになかった。
(かなり距離を離されたな……。カナヲちゃんに追い付けるといいけど……)
そう願いながら風を切って走っていると炭治郎達を見つけた。
カナヲの姿はない。
炭治郎を見失ったのかと思った次の瞬間。
カナヲが木の上から飛び降り、炭治郎の背中に両足でのしかかりながら押し倒した。
その衝撃で禰豆子が放り出される。
(そう事は簡単に運ばないか……!)
期待を込めた願いは見事に玉砕。
カナヲが禰豆子の頚へと日輪刀を翳すのが目についた。
それを阻止するためにカナヲの羽織を握り締め引き倒した炭治郎の頭上にカナヲは容赦なくかかと落としを食らわせ地面に沈めると、
(うわっ、痛そう………)
カナヲは走って逃げる禰豆子を追いかけていった。
気を失った炭治郎は後回しだ。
カナヲは執拗に禰豆子の頚を狙っている。
桜は横から回り込み、カナヲの日輪刀が禰豆子の頚を捉えた瞬間、飛び込んで禰豆子を抱き抱える形で地面に転がった。
かすった日輪刀が、桜の髪の先をパラパラと切り落とす。
間髪入れずに桜は自分の背に禰豆子を隠すと日輪刀を抜き、斬りかかってきたカナヲの刃を鎬で受け流した。