第58章 どんな時でも私と冨岡さんはずっと君の味方です
しのぶは、この山にいる鬼を全て殲滅するつもりでいる。
それがカナヲにも伝わっているなら、必ずカナヲは禰豆子を狙ってくる。
桜は周囲に目を配った。
「桜さん………」
「はい?」
「俺は、鬼殺隊を抜けないといけなくなるんでしょうか?」
追い詰められたような口調と言葉に桜は炭治郎を見た。
浮かない表情ながら、どこか真剣さが見えて桜は何の根拠もない『大丈夫』という無責任な気休めの言葉をかけることができなかった。
でも、ずっと無言を貫くことも炭治郎の考えを肯定しているようで余計に心配をかけてしまいそうだ。
「これから先の事は私には分かりませんが、どんな時でも私と冨岡さんはずっと君の味方です」
桜がそう答えると、炭治郎は少し嬉しそうに笑った。
これまで二度助けてくれた彼女が言うならきっとそうなんだろう。
この人たちが裏切ることはきっとない。
味方がいるというだけで少し安心感が持てた。
その時だった。
「っ!?」
桜が背後に気配を感じ鋭く目を細め、斜め後ろを横目で睨み付けた。
やはり追いかけてきたか。
「君、後ろを振り返らず走りなさい」
「え?」
強い口調で言われたかと思うと、隣を走っていた桜の姿が消えた。
驚いたけど、炭治郎は桜に言われた通りに後ろを振り返らず前を向いて走り続けた。
先ほど桜が口にした『追っ手』という言葉が炭治郎の脳裏に浮かんだ。