第56章 こんな形で再会するなんて運命ですよね
「鬼は人間だったんだから。俺と同じ人間だったんだから」
なぜ炭治郎はそこまで鬼に気持ちを寄せてあげられるのだろうか。
鬼に家族を奪われて悔しくはないのか。
恨んだりしないのだろうか。
炭治郎は優しい。
だけどその優しさは時には甘さにもなる。
その優しさに付け入る鬼にの前では、それが仇となり命取りにもなりかねないというのに。
桜は不思議な気持ちで炭治郎の訴えを聞いていた。
「醜い化け物なんかじゃない。鬼は虚しい生き物だ、悲しい生き物だ」
炭治郎から睨み付けるような鋭い眼(まなこ)で見つめられた義勇の蒼い瞳が、ふと炭治郎の傍で横たわる少女の姿をとらえた。
「っ、」
竹を咥えた少女と、見上げてくる少年の姿に義勇が切れ長の目を開いた。
「お前は………」
自分が対面している二人が二年前に出会った兄妹だということに義勇はようやく気づいたのだ。
「こんな形で再会するなんて運命ですよね」
あの時の少年が左近次の元で修行を重ね、最終選別の試練を乗り越え鬼殺隊の隊員として目の前に現れた。
この場での出会いは運命の再会とは言いがたかったけれど。
その時、
「!?」
「!」
桜と義勇の視界に猛スピードで接近してくるしのぶの姿が入った。
日輪刀に手を掛けたしのぶの標的が禰豆子だと咄嗟に判断した桜は炭治郎ごとその上に覆い被さった。
さらに、その桜の体をまたぐようにして義勇が一歩踏み込んで屈み低姿勢のまま居合い構えし、しのぶが斬り込んできたと同時に抜刀し、しのぶの体を持ち上げるように刀を弾き返した。
「あら、どうして邪魔するんです冨岡さん」
弾き飛ばされたしのぶは一度地に足をつけ、勢いを落としながら一回転し着地した。