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あなたがたった一度の恋でした【鬼滅の刃】

第56章 こんな形で再会するなんて運命ですよね







淡い光が桜の掌(てのひら)から溢れだし、炭治郎の傷をゆっくりと塞いでいく。



「っ……!」



その光景を目の当たりにした炭治郎が驚きに目を大きく見開かせていた。

人の傷がこんな風に消えていくのは初めて見た。

だけど、不思議と怖いとは感じなかった。

温かい、それでいて、なにか柔らかなぬくもりに包まれているような。

まるで母親に抱き締められているような感じに、炭治郎は心地よさを感じて目を閉じた。












「出血は止まりましたよ」



そんな声が聞こえて炭治郎は目を開けた。

全身に感じていた、斬った時の独特の痛みもなくなったような気がする。

体の重みは変わらないままだけど、何かが先ほどと違うのはどことなくわかる。



「でも、失われた血が戻ることはないので無理は禁物ですよ」

「はい………」



彼女が何を言っているのかわからないまま、炭治郎は返事した。

それにしても、痛みがすこし和らげばあんなに重かった体も先ほどより少し楽に感じるような気がする。

炭治郎は少し動くようになった体を起こし禰豆子を探した。



「妹さんも大丈夫ですよ。」



二の次には妹は気にする炭治郎に桜は苦笑をもらした。













その様子を見ていた累がより強固な糸を作り上げていく。

瀕死だった炭治郎が這うように動く。

それも、またあの女のせいだ。

目障りだ。

憎悪や怒り、殺意が頂点に達した時、累の最凶の糸が完成した。



「刻糸輪転!」



それを見た炭治郎が禰豆子を守るように覆い被さった。

桜はどんな強力な術が来るのか予測のつかない攻撃に兄妹の前に立つと日輪刀の柄に手をかけた。

万が一の時はーー!

義勇は背後の桜の動きを気配だけで感じとり、表情一つ変えず日輪刀を両手で握り締めた。



「全集中」



なにがあろうと桜には糸一本でも触れさせない。



「水の呼吸 拾壱ノ型 凪」



義勇の間合いに入った累の糸がすべて無に帰りハラハラと舞い落ちていく。



(最硬度の糸を……斬られた?)



何が目の前で起きたのか累を含め誰にも分からなかった。





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