第55章 まとめて始末してしまおうーー
義勇と桜は走った。
血の匂いと木々に残された跡の正体がわかったからだ。
それは、その先の光景が明らかにしていた。
倒れているのは鬼殺隊の隊員に違いない。
そして、あの場にいるもう一人は気配からいって間違いない、十二鬼月だ。
「!冨岡さん!!」
「任せろ」
桜が見たのは格子状のような鳥籠の中に閉じ込められた隊員の他に、地面に倒れる少女の姿。
自分は少女の様子を見るから、隊員のことをお願いするという意味を込めて桜が送った合図を義勇はしっかりと受け止めた。
二手に分かれ、義勇は隊員に、桜は少女に駆け寄った。
「大丈夫ですか!?」
グッタリしている少女は隊服ではなかった。
(鬼殺隊の隊員じゃない?)
全身が酷い斬り傷だらけで血まみれだ。
(この子、どこかで………)
桜はその少女をどこかで見たような気がした。
ずっと昔に、どこかで……。
竹筒なんか口に咥えてたら忘れるはずはない………そう思った瞬間、桜は思い出した。
「雪山の鬼!」
絆の深さが他とは違う、人間と鬼の兄妹の妹だ。
それに、この竹筒はこの鬼が人を襲わないようにと義勇が作ったものだ。
義勇が左近次を育手として紹介した時から、また会うことになるかもしれないとは思っていたけど、こんなにも早く再会するなんて。
(ということは、あっちにいるのは兄のほうね)
この少女の傷は、兄を守った時に作ったんだろうか。
人を喰わなければ治りも遅いというのに、こんなに全身を斬り刻まれて。
よく見れば、この傷跡はここに来るまでに見てきた木に付けられたものとよく似ている。
(これがあの十二鬼月の異能………)
この様子では兄のほうも無事ではないだろう。
妹と同じかそれ以上か。
人間であるぶん、出血が多ければ命の危険もある。
とにかく、まずはこの少女の手当てをしなければ。
桜は急いで妹の治癒を始めた。
まさか、その光景を食い入るように下弦の伍が見ていたとは思いもしないで。
「ーーあんな能力を持つ人間もいるのか………邪魔だな……」
「…………」
まとめて始末してしまおうーー