第51章 猪の被り物をした人間だ
那田蜘蛛山の麓。
着いたとたんに漂ってくる悪臭に、鼻がひんまがりそうになった。
この山の奥でいったいなにが起きてるのか。
私は鼻を手の甲で塞ぎながら山の頂上を見上げた。
その時、
山腹からなにかが飛んでくるのが見えた。
それは真っ直ぐ私たちのほう目指して飛んできているようにも見える。
「なに?」
「雀のようですね」
目の前に降りてきた雀の様子が変だ。
ものすごく小刻みに羽を慌ただしくバタつかせている。
しのぶちゃんの回りを何度も周回してチュンチュン鳴いている。
それはまるで私たちに、こっちに来てほしいと言っているようだった。
もしかして、この雀は鎹鴉ならぬ鎹雀だったりするのだろうか。
「冨岡さん、ここで二手に別れましょう。私はこの雀(こ)に付いて行きますので、冨岡さんは反対側をお願いします」
「承知した」
「桜さん、またあとで」
「うん」
しのぶちゃんも同じことを考えたのか、カナヲちゃんを連れ、早く早くとでも言いたげな雀のあとを追って山の中に入っていった。
「行くぞ」
「はい!」
私たちはしのぶちゃんたちとは反対側の山の中へと潜入した。
奥に進めば進むほど臭いがキツくなっていく。
血の匂いも混じってるし、どれだけの隊員が犠牲になってしまったのか。
何か隊員や鬼の手がかりは残ってないかキョロキョロ辺りを確認しながら先を急いだ。