第50章 「十二鬼月が現れた」
私は今、鬼殺隊本部の門前にいる。
冨岡さんと共にお館様に呼ばれたからだ。
そこに、しのぶちゃんとカナヲちゃんが一緒に来た。
この四人が揃うなんて何事だろうと思っていると、柱の二人だけが中に呼ばれたので、私たち継子はここで待機していた。
「カナヲちゃんとは蝶屋敷でよく会うけど任務は久しぶりだね」
「……………」
「今回はどんな任務なんだろね」
「……………」
「柱が二人も呼ばれるなんて」
「……………」
私の前でニコニコしていたカナヲちゃんが銅貨をピンと親指で強く弾いて、回転しながら落ちてきた銅貨を片方の手の甲で受け止め、他方の手で押さえた。
押さえていた手を開きカナヲちゃんが銅貨を確認したあと、口を開いた。
「大丈夫?」
「え?」
私が一人でずっと話してたから頭がいたい子だと思われてしまったのだろうかと一瞬固まってしまった。
すぐにカナヲちゃんはそんなことを思うような子じゃないと思い直したけど。
カナヲちゃん、なんの心配をしてくれたんだろ。
「この間、師範のところに診察に来ていたから」
「あのときのこと心配してくれてたの?」
胸の違和感と痛みに気付いて、しのぶちゃんのところに行った日のことだ。
結局、診断結果を教えてくれなかったんだっけ。
あれから動機が激しくなることもあったけど、それ以上に症状が悪化するようなこともないから、もう気にすらしてなかった。
カナヲちゃんがずっと心配してくれていたことが、すごく嬉しい。
「ありがとう、カナヲちゃん。もうなんともないよ」
「本当?」
「うん!」
「よかった」
そう言ったカナヲちゃんの破顔には破壊力があった。
ひまわりのように明るくて優しい笑顔。
同性なのにキュンとしてしまう。
思わずギュッとしたくて両手を広げ抱きつこうとした瞬間、門が開いて冨岡さんとしのぶちゃんが戻ってきた。