第49章 俺に任せて君はここで待機だ
祭りを堪能し、帰路に着く頃には真夜中になっていた。
村から出たからもう刀を隠しておく必要もないし、鬼が活動する時間帯ともあり、いつ出てきても対応できるように私は日輪刀を布から出して腰帯に差し込んだ。
シンと静まり返った森は、私たちの歩く音だけが響いている。
時折鳴く鳥の声がより一層不気味だ。
鬼はちっとも怖くないけど(というか慣れた)、幽霊とかお化けとかいった類いは苦手だ。
一人じゃなくてよかった。
私は隣に煉獄さんがいるというだけですごく安心していた。
「!」
「!」
その時、不穏な空気を感じて私は足を止めた。
煉獄さんも気が付かないはずはなく、険しい顔をして一緒に立ち止まっている。
間違いない、前方に鬼が隠れている。
そう確信すると同時に奥から鬼が二体姿を見せた。
「やはり現れたか」
煉獄さんが眼光鋭く鬼を見据えている。
煉獄さんが日輪刀に手をかけた音を聞いて、私もそれに続こうとして日輪刀の柄に手をかけたとき。
バサリと煉獄さんが羽織を翻し、その背に私の姿を隠すように一歩前に出た。
「桜はここで待て」
「ですが……」
「その格好では戦いにくいだろ。俺に任せて君はここで待機だ」
肩越しに振り返って煉獄さんはそう言うと、鬼に向かって走っていってしまった。