第4章 「すみません!俺、そんなつもりじゃ………」
ハッとして顔を上げた、眉尻の下がった隊士の目と目が合った。
「気休めになるかわかりませんが、あなたが自分を責める必要はありません。本当によくやってくれました。ダメなのは私です。私が………」
「すみません!俺、そんなつもりじゃ………」
情けなさと悔しさで重ねた手が震えた。
この人が己を責めているのは、私が上手く指揮をとれなかったせいだ。
そう思っていると、彼が慌てて申し訳なさそうに謝罪してくれた。
「大丈夫です。分かってます。治療をはじめますね」
彼は眉を八の字にしたまま一言お願いしますと呟いた。
わかってる、彼が私を責めるつもりで言ったのではないことくらい。
私は彼の腕に巻かれた包帯を解きながら昨日を思い出していた。
私がいながら圧倒的な力に押されてしまった。
無力な自分に、ここに来ていたのが柱だったらと何度思ったことか。
十二鬼月などではなかったが、それに近い強さと、多く残った生存者を庇いながら戦わなければならなかった分、自由に動くことのできなかった私は苦戦を強いられた。
この病室に運ばれたのは、ともに戦い比較的軽傷な者達ばかりである。
重傷者は生存者を守るために命を投げ出して深傷(ふかで)を負わされてしまった。
彼らには謝っても謝りきれない。
だから、お館様が休みをくれたことにとても感謝した。
せめて、治療を手伝うことでお詫びをすることができるから。
気休めだし私の気がそれで晴れることはないけど。
血のにじむ包帯を私はそばに置いた。
深くはないが浅くもない、そこからはまだ真新しい血が出ていた。
本来ならこれは縫わなければならない傷なのだろう。
私はその傷を目にしてもう一度ごめんなさいと謝った。