• テキストサイズ

あなたがたった一度の恋でした【鬼滅の刃】

第4章 「すみません!俺、そんなつもりじゃ………」





ハッとして顔を上げた、眉尻の下がった隊士の目と目が合った。



「気休めになるかわかりませんが、あなたが自分を責める必要はありません。本当によくやってくれました。ダメなのは私です。私が………」

「すみません!俺、そんなつもりじゃ………」



情けなさと悔しさで重ねた手が震えた。

この人が己を責めているのは、私が上手く指揮をとれなかったせいだ。

そう思っていると、彼が慌てて申し訳なさそうに謝罪してくれた。



「大丈夫です。分かってます。治療をはじめますね」



彼は眉を八の字にしたまま一言お願いしますと呟いた。

わかってる、彼が私を責めるつもりで言ったのではないことくらい。






私は彼の腕に巻かれた包帯を解きながら昨日を思い出していた。

私がいながら圧倒的な力に押されてしまった。

無力な自分に、ここに来ていたのが柱だったらと何度思ったことか。

十二鬼月などではなかったが、それに近い強さと、多く残った生存者を庇いながら戦わなければならなかった分、自由に動くことのできなかった私は苦戦を強いられた。



この病室に運ばれたのは、ともに戦い比較的軽傷な者達ばかりである。

重傷者は生存者を守るために命を投げ出して深傷(ふかで)を負わされてしまった。

彼らには謝っても謝りきれない。



だから、お館様が休みをくれたことにとても感謝した。

せめて、治療を手伝うことでお詫びをすることができるから。

気休めだし私の気がそれで晴れることはないけど。



血のにじむ包帯を私はそばに置いた。

深くはないが浅くもない、そこからはまだ真新しい血が出ていた。

本来ならこれは縫わなければならない傷なのだろう。

私はその傷を目にしてもう一度ごめんなさいと謝った。





/ 182ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp