第4章 「すみません!俺、そんなつもりじゃ………」
「みなさん、こんにちは」
ガラと病室の引戸を開けて私は冨岡さんと中に入った。
柱である冨岡さんのお見舞いに喜ぶ隊士達の顔を見てホッとした。
笑顔を見せてくれるだけの余裕があることに。
この部屋に運ばれたのは昨日、私と任務を共にした人達。
つまり、私が守り抜けなかった人達だ。
それでも、安堵できたのは束の間で。
隊士達の顔色が急激に悪化するのを見て、やはり体調は良くなかったのだろうか。
気をつかって元気に見せてくれただけで、本当はそうじゃなかったのかもしれない。
「しのぶちゃんが忙しそうだったので、お手伝いに来ました。私では不安でしょうが、よろしくお願いします」
そう言うと隊士達はおどおどしたり、そわそわしたりしつつお辞儀をしてくれた。
医師ではない私が治療にあたることに不安がぬぐえないみたい。
それもそうだろうと思う。
逆の立場だったら、私も同じ気持ちになるだろう。
だから、みんなのこんな反応を見ても何も思わなかった。
それよりも、もっと心配で不安なことが私にはあった。
それは、私の治療は特別なものだから。
大丈夫、目の前の治療のことに専念するだけ。
私は自分自身に強く言い聞かせた。
まず入り口に一番近い患者から診ていくことにした。
「すみません、俺が油断したばっかりに……」
「私こそ、駆けつけるのが遅くなってすみませんでした」
一番手前のベッドにもたれ掛かり座っている隊士がシュンと申し訳なさそうにしていた。
この人は逃げ遅れた村人を庇って傷を負ってしまった人だ。
歩み寄るとその手が強くシーツを握り締めているのに気付いた。
きっと不甲斐ない自分を責めているに違いない。
私がみんなを守れなかったことを不甲斐なく思い、悔しい思いをしているように。
だからこそ、その気持ちが手に取るように分かるから、私は彼の手に自分の手を重ねた。