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あなたがたった一度の恋でした【鬼滅の刃】

第43章 師範からもらった物、一生の宝物にしよう






「どうぞ、お手に取って見てください」



迷っていると奥から店主が出てきて声をかけてくれた。



「付けてみるか?」

「じゃあ、少しだけ……」



付けてみようかなと思って手を伸ばそうとする前に、横からスッと伸びた手に簪を取られた。

もちろん、その手は冨岡さんのもの。

冨岡さんは簪を手にしたまま、私の背後にまわった。

どうしたのかと思う間に、冨岡さんの手が私の髪に触れて一際胸が大きく高鳴った。

普段は日輪刀を握る力強いその手が、今は優しい手付きで髪を梳いてくれているのかと思うと胸のドキドキが止まらない。

今、私はどんな顔をしてるんだろ……。

冨岡さんは器用に後ろ髪を結うと、後頭部で団子を作ってそこに簪を挿してくれた。



「おっ、似合うね」



店主の第一声で挿し終わったのだと分かる。

簪を初めて挿したけど、似合ってるのかな。

変じゃないかな。

私は意見を仰ぐように冨岡さんのほうに振り向いた。



「どうですか?」

「可愛いな」

「!」

「やはりよく似合う」



微笑みとともに思ってもみなかった言葉を冨岡さんからもらった私の頬はきっと赤くなっていたと思う。

照れ臭くてとっさに目を冨岡さんからそらしてしまった。



「そ、そうですか?」



普段『可愛い』なんて使わない冨岡さんが言うくらいだから、この簪とは相性がいいのかもしれない。

店主も『見てみますか?』と手鏡を差し出してくれたのでお借りして手に取った。

少し俯き加減になり、頭部を写すように鏡を調整して見てみた。

自惚れるわけじゃないけど、この簪は冨岡さんが綺麗にまとめてくれた髪によく映えていた。



「ほんとだ、可愛いですね」



自分ではなく簪が。

こういう仕事柄、挿す機会というのはあまりないかもしれないけど、一目惚れした物というのは今を逃したらもう二度と恵まれないかもしれない。

買うことに少し迷っていたけど、心は決まった。



「すみません、

「これをもらおう」

…………え?」



私の声を遮った冨岡さんが懐から財布を取り出そうとしていたので、その手を私は慌てて止めた。



「自分で支払いますから!」

「気にするな。俺がお前に贈りたい」

「っ、」



今日一日で胸が高鳴ったのは何回目だろ。







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