• テキストサイズ

あなたがたった一度の恋でした【鬼滅の刃】

第43章 師範からもらった物、一生の宝物にしよう






「そういえば、この間蜜璃ちゃんから美味しい甘味処を教えてもらったんです。行ってもかまいませんか?」

「ああ」

「じゃあ早く行きましょう!」



冨岡さんの許可ももらったので私は足早にその店を目指す。

背中越しに小さく冨岡さんが笑った声が聞こえた。

急いでここから離れようとした私のこと、食欲旺盛な女だと思われたに違いない。

でもこの際、あの人たちの視線から早く解放されるならもうどう思われたってかまわない。
















早足で歩いていた私は横目に見た店先に並ぶ装飾品に目がいった。

櫛、簪、髪留めといろいろな種類の中で特に目についた物があった。



(あ、この簪可愛い)



水色に近い蒼に紫の蝶をあしらった玉簪に思わず急いでいた足が止まった。

そういえば、こんな可愛らしい小物を身につけたことがなかった。

さっき冨岡さんのことを見ていた女の人たちは、みんなこんなのを付けて着飾ってたな。

女の子らしくて可愛かった。



「なにか欲しいものでも見つけたのか?」

「冨岡さん。いえ………」



冨岡さんに声をかけられた。

欲しいのか、と聞かれれば買いたいくらいにそれを気に入ったけど。

でも、鬼殺隊として働く私がおしゃれなんてしても無意味だし。

子供っぽい私がしても、さっきのお姉さんたちみたいには似合わない。

それに、着飾ってもそれを見せる相手もいないわけだし。

そうなると買う理由が無くなってしまった。



「遠慮しなくていい」



気に入ったものがあることが声に滲み出ていたのかもしれない。

隣に立つ冨岡さんを見上げると、すでにその目は店先の商品に向けられていて品定めをしていた。



「その紫の蝶が付いた玉簪が可愛いなって思ったんです」

「確かに、おまえに似合いそうだな」

「そ、うですかね」



そう言われてドキッとした。

お世辞だと思っても、やっぱりこんなこと言われるのは女として嬉しかった。

さっきは買う理由が無くなったなんて思ったけど、冨岡さんにそう言ってもらえるとまた欲しくなってきた。





/ 182ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp