第43章 師範からもらった物、一生の宝物にしよう
あの日の出来事のことで私たちが裁判にかけられことなく数ヶ月が経った。
いつ呼び出されのるかとヒヤヒヤしながら毎日を過ごしていたぶんだけ肩透かしをくらった気がした。
もし、他の柱に知られたら大騒ぎになっていたはずだから冨岡さんはきっと報告をしていないし誰にも話してないんだ。
お館様にも兄妹のことを秘密にしたんだろうかと、ふと気になった。
そして今日は久しぶりに冨岡さんと町に出ていた。
だって、『たまには稽古を休んで出掛けないか?』なんて誘われたら、喜んで行かないわけにはいかないよね。
稽古も大切だと思うけど息抜きも必要だし、なによりも今日の休みは私のためなんじゃないかと思えた。
ずっと隊律違反のことばかりを気にしていた私の気晴らしに誘ってくれたんじゃないかと。
だって、冨岡さんてばさっきからお店には目もくれず歩くばかりで、なにか欲しいものがあるようにも見えないから。
ーーなんて自惚れすぎなのかな?
冨岡さんとの稽古はもちろん大好きだけど、こうして町の散策をして歩き回るのも楽しかった。
昼間の町はたくさんの人で溢れていた。
夫婦に老夫婦、子連れ、若い男女なんて見ていると恋人同士なのかな?なんて勘ぐってしまう。
こうして冨岡さんと並んで歩いていると私たちも兄妹か恋人同士に見えるのかな。
「どうした?なにか欲しいものでもあったのか?」
「いえ、なんでもないんです」
「?」
キョロキョロしていた私に、冨岡さんが不振な顔つきをしている。
人間観察してました、と話しても冨岡さんのことだから『楽しいのか?』とか『それをしてどうするんだ?』なんて至極真っ当な意見が帰ってきそうだ。