第40章 竈門炭治郎との出会い
冨岡さんが、先に動いた。
それに気づいた少年が鬼を抱いて身を守ろうとするけど、素早さでは冨岡さんに勝てずあっさりと奪われてしまっている。
冨岡さんは、鬼の手首を後ろ手に一纏めに掴んで、また元の場所、私の隣まで戻ってきた。
それは一瞬の出来事で、私にはその一部始終が見えたけど、少年は目で終えなかったみたいで、困惑した表情をしていた。
「禰豆子!!」
少年は、鬼が冨岡さんに捕らわれたことをようやく理解し慌てて駆けてこようとしていたけど、冨岡さんに冷たく『動くな』と、ただ一言言われただけで、ピタリと硬直したように動きを止めてしまった。
だけど、その瞳は妹を取り戻すことを諦めてはいない。
まるで、どうやって取り戻そうか考えあぐねているように私の瞳には映った。
「俺の仕事は鬼を斬ることだ。もちろんお前の妹の頚もはねる」
少年にとって冨岡さんの声は冷たくて、その言葉は冷酷に聞こえているに違いない。
目の前で大切な家族(いもうと)を殺されそうになっているのだから当たり前だとも思う。
だけど、こちらも人の血の味を覚えた鬼を野放しにはできない。
ここで少年への情に流されて冨岡さんが今この手を離して、少年に返してしまったら鬼は少年や私たちを襲う。
けっきょく、鬼は私たちに頚を斬られることになるんだ。