第40章 竈門炭治郎との出会い
鬼化した家族が家族を襲うなんてよくある話だ。
その場面は幾度となく見てきたんだから。
残された人からすれば大切な家族が鬼になったなんて非現実的なことは受け入れがたいに決まっている。
昨日まで、共に過ごし、共に笑い、共に生きていた大切な家庭が一瞬にして壊され、家族が鬼となり人を襲う。
そんな恐ろしいこと誰も信じたくはないだろう。
だけど、もうどうにもならない。
鬼を元の人間に戻す手立てなど、この世には存在しないんだから。
だったら、妹が人を喰わないようにしてあげることが、残された兄がすべきことじゃないんだろうか。
少年がずっと『妹だ』と言い続けている鬼はジタバタと暴れ、飢えを我慢できず今度は標的を私たちに変えていた。
喰えるならもう誰でもいいのか。
彼女がもう人間の理性など少しも残されていないのは明白だ。
それなのに、少年まだそれを必死に押さえ込もうとしている。
反撃にあえば少年の末路は死だけ。
鬼になった家族を最後まで庇い守ろうとする姿は感銘する。
だけど、その家族が他人を襲ったり、人を喰ったりする可能性を思わないのだろうか。
今しがた自分がそうなっていたように、妹が他の人間を襲わないという保証はない。
大切だから守ってやるだけが優しさじゃないと思う。
時には悲しくても辛くても冷静な判断が必要になる。
少年には苦しいことだろうけど、やらなければならない事実を受け入れてもらわなけば。