第40章 竈門炭治郎との出会い
私はそこから飛び降りて冨岡さんの隣に並んだ。
体を起こして私たちを見上げる少年は、自分とそう歳は変わらなさそうに見える。
彼は今自分が置かれている状況を把握できていないような困惑した表情をしていた。
私も似たような心境ではあるけど。
(どうして……)
未だに、鬼を大事そうに抱き締めて守っているの。
飢えて今にも人を喰らいたそうにもがいている鬼を。
「なぜ庇う」
冷淡な声とそれに釣り合う無の表情で冨岡さんが少年を見下ろしている。
冨岡さんは鬼に情けをかけたりしないから、少年が鬼を庇ったことに難色を示しているのがわかる。
きっと私と同じ感情に違いない。
そんな私たちに少年は怯んだりしなかった。
「妹だ!俺の!妹なんだ!」
少年はしっかりと私たちの姿をその目に焼き付けるかのように見て、そう言った。
妹だから殺さないでと、手を出すなとそういうことだろう。
喰われそうになっても、まだ守りたいなんて。
この少年にとってその鬼が大切な人だということは、その様子から痛いくらいに伝わってくる。
けれど、その情に流されて見逃すことはできない。
どんなに言われても彼女は鬼、私たちの見る目は変わらない。
しかも、彼女は怪我をしているようだし、鬼に変わる時にもかなりの体力を消費しているから飢餓状態のはず。
そんな鬼が人(えもの)を目の前にして見逃したりはしないだろう。
「それが妹か?」
「……!」
冨岡さんに聞かれて少年は何も言い返さない。
それは本当はわかってから。
もう妹は妹でなくなってることに。
私たちが何をしにきたかも。
だけど、失いたくなくて必死でもがいてるんだ。