第6章 コードネーム
「とんだ女神様だ」
私は次の一手を考えようとしたが、その思考を瞬時に止めた。
後ろから聞こえて来た声に、聞き覚えがあるからだ。
それは…ここに居ると思っていなかった、けれど先ほどまで私の脳裏に浮かんでいた人の声だ。
『狩の続きがしたくなったの』
私は、ボス譲りの冗談めかした返事をしてみる。声の主はあっさりと、私の視界と手を解放した。
「狩るべき相手を見誤らないで頂きたい」
声の主は私の耳元でそっと囁き、私の左太もものレッグホルスターに奪い去っていた私の愛銃を収めた。
その動きの鮮やかさに私は感嘆したが、すぐに声の主が組織に潜入していたことを思い出した。
『どうして気づかなかったのかしら…?!』
相手の顔を確かめようと振り返った私は、言葉を一瞬だけ失う。
『気づかないわけね』
浮かんだ疑問は、瞬時に解決する。私の目の前にいた男は、声は赤井さんだが顔は違ったからだ。
その顔は先ほど、ターゲットに「お役人さん」と呼ばれていた男の顔だった。
赤:「靄一つ残さない主義でね」
赤井さんは、そう言いながらターゲットの男が渡していたUSBメモリーを私に見せた。
彼はターゲットの接触相手に変装して、潜入していたのだ。
ターゲットが行方不明になった後で、接触相手からの目撃情報が出ないようにするために。
そして、彼が提案していた護衛も兼ねているのだろう。