第6章 コードネーム
『声は?』
赤:「ああ。これだよ」
そう言いながら、赤井さんは優雅な手つきで蝶ネクタイを外して私に見せる。
蝶ネクタイと思っていたそれは、裏に特殊な機械が設てあった。変声機になっているようだ。
赤:「この国には、MI6も顔負けの協力者が居てね」
『とんだ国だわ。個人も、組織も』
赤井さんはククっと、いつものように喉の奥で笑いながら蝶ネクタイを締め直した。
赤:「気をつけろよ。どこに誰の目があるかわからない。それに…」
『魅きつけるから?』
赤:「ああ」
赤井さんは私の返答に一瞬だけ驚いた表情を見せたが、すぐに優しい目元に変えた。
そして、私の頭をそっと撫でる。「ようやく自覚したか」と褒めるように…
『ありがとう』
赤:「今は、気づかれないように俺が守ってやる」
それだけ告げて、赤井さんは暗闇の中へ消えていった。
私は先ほどまで、赤井さんが撫でていた頭にそっと自分の手を添え、その感触を思い出していた。