第8章 脱出 ★
俺のセーフハウスのベッドに川崎ミアを下ろすと、俺は彼女の状態を丁寧に確認した。
荒い呼吸と大量の汗、そして上気した頬。
俺は瞬時に、彼女が媚薬を盛られていることに気づいた。
赤:「クソっ!」
拳を震わせながら、俺は叫んだ。
直ぐにジョディに電話をかけて、解毒剤を用意するように伝える。
ジョディは病院に運ぶことを提案したが、俺はそれを無視した。
今、彼女を病院に運べば、降谷くんの作戦が水の泡になる。
組織にバレずに、彼女を復帰させるには俺の手だけで守り切るしかない。
ジョディに事情を簡単に説明し、物資調達の手は借りたいがそれ以外は、自己完結する旨を伝えた。
ジョディは、渋々ではあったが納得した様子で「解毒剤は30分以内にポストに入れておく」とだけ告げて、電話を切った。
『んぅ…ん…』
切電と同時に、ベッドから小さなうめき声が聞こえたので、俺はベッドサイドに駆け寄った。
赤:「大丈夫か?」
彼女は眉根を寄せて、何かに耐えている表情を浮かべている。
おそらく媚薬が全身に回って、身体中に沸き起こる熱に耐えているのだろう。
俺は、少しでも気持ちが安らぐように彼女の手をそっと握りしめた。
その瞬間、彼女は目を少しだけ開けて苦しそうに俺に懇願した。
『おねがい…私のこと…抱いて?』
赤:「なっ!」
俺は彼女の発言に耳を疑った。
しかも、潤んだ瞳に俺の姿を映しているが、彼女は俺を認識していない。
その証拠に、彼女はある男の名を口にしたのだ。
『おねがい…零さん…』