第8章 脱出 ★
彼女は俺の手を握り返しながら、なおも縋ってくる。
『がまん…できない…』
言葉の合間に、熱のこもった吐息を彼女はもらす。
そして、その魅惑的なオッドアイに涙を溜めて、俺を見つめている。
彼女は、全身で俺を求めていた。
赤:「それ以上惹きつけるなって…」
彼女に聞こえないように、俺は呟く。
「これ以上、傍に居られない」と思っても、離れることが俺はできない。
思いとは裏腹に、俺は上気した彼女の頬にそっと触れていた。
ひんやりとした俺の手の感触が気持ち良いのか、彼女は猫のように頬を擦り寄せてくる。
その姿が引き金となり、俺の中で何かが音を立てて壊れた。
赤:「恨むなら、俺を恨め…」
誰に言うわけでもなく呟き、俺は彼女の目尻にたまった涙をそっと拭う。
そして、薄く開いた彼女の唇を自身のそれで塞いだ。
『ん…んん…』
キスされるのを待ち焦がれていたようで、彼女は積極的に舌を絡めてくる。
それに応えながら、俺は形をなぞるようにドレスの上から彼女の胸に手を這わせた。
『っつ!…はぁ…んぅ…』
薬のせいで敏感になっているソコは、触れるだけで十分な刺激を彼女に与えたようだ。
一瞬だけ彼女は驚き、唇を離した。
しかし、直ぐに角度を変えて深く舌を差し込んで来る。
「もっと欲しい」と強請るように…
俺は、舌の動きに合わせながらドレスのホルターネックを外す。
そして緩められた胸元へ、俺は手を滑り込ませた。