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烏たちの帰る場所。【ハイキュー!!】

第6章 出会い頭の瞬き


人波の中をズンズンと進んでいく月島とそれを追う山口と。

その間には、会話はなく、いつもよりも固い空気に包まれていた。

押しつけられる部活動のビラを片手で受け取りながら、は山口に引かれる手を見る。

いつまで繋いでいるのだろう。
ちゃんと自分で歩けるのに。

「たっくん、手…」

「いいから」

振り返らないで山口が言う。さらにその手には力が籠った気がした。

その時。


「おーい、そこの一年カップル。初日からアツアツですか?見せつけてんのか?あああん??」

二人の進行方向に、いつのまにか厳つい目つきの坊主頭が立ちはだかっていた。

「え?ええ?」

「堂々と手ェ繋いで、良いご身分ですな!一年ボーイコラ」

ずいっと坊主頭にすごまれた山口は、やっと自分がずっとの手を掴んでいたことを意識した。

「あ、ああああの、こ、これは!!!」

「ああ?口答えすんのか?リア充さんよ?そんな生意気な奴はウチの部活入れや、コラ。」

根性叩き直してやると息巻く坊主頭。
ほらよ、と差し出されたビラに目が点になる。

そこにはデカデカと

『男子バレーボール部活 部員募集!!!!』

の文字が…。

「へい。一年ガール!お前もウチ入れや。かわいいジョマネは大歓迎だぜ!」

「へ?」

も坊主頭にビラを押し付けられた。
目からの圧に思わず肩がすくむ。

思わず山口の後ろに隠れる。

「コラ、田中。一年生いじめないで!」

スパーンと紙束のいい音が響く。
なんだなんだと、二人は音のした方を見る。
すると、坊主頭の背後から、黒髪ロングヘアをなびかせた美女が現れた。

「きっ、潔子さんっ!!!」

坊主頭…もとい、田中と呼ばれた先輩は恍惚の表情で美女を見つめる。なんだ、これがあの厳つい先輩と同一人物なのか!?
そして、なんで叩かれて嬉しそうなんだ!??

「怖がらせてごめんね。」

美女が山口たちを振り返り、風が巻き上げた髪を耳にかける。そんななんてことない仕草でも、絵になってしまう。

「こんな見た目だけど、悪い奴じゃないから許してやって?良かったら、明日から部活見学に来れるから顔出してもらえると嬉しい。」

じゃあ。とニタニタ笑う田中を引きずって美女は去っていった。

まるで、嵐のようなできごとであった。
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