第6章 出会い頭の瞬き
担任の話が長引き、他のクラスよりも教室を出るのが遅くなってしまった。
携帯を確認すると、から昇降口で待っている旨のメールが来ていた。
「行くよ、山口」
月島も携帯をパタンと閉じている辺り、同様の連絡が来ていたのだろう。
二人連れ立って歩く廊下は、同じクラスの人が少しいる程度だが参考方向の昇降口の方からガヤガヤとした勧誘の声が響いてくる。
その喧騒に月島は思わず舌打ちをする。
「ちゃんと合流したら、すぐ帰ろうねツッキー。」
「当然。本当、うるさくてイラつく。」
そう言って、月島はヘッドホンをつけて黙ってしまった。
幼馴染の機嫌がこれ以上悪くならないよう、山口はヒヤヒヤしながらフォローを入れる。
山口はそんな月島の隣を歩きながら、辺りに視線を巡らしていた。
すると、自販機脇の昇降口の扉に寄りかかっていちごミルクを飲んでいるを見つけた。視線は外の部活動勧誘の人波にあり、こちらには気づいていない。
山口は上履きのままそっと近づく。ほんの出来心だ。のびっくりした顔が見てみたいという欲に駆られた。
死角から回り込んだ山口は、人差し指を伸ばした状態の手での肩を叩いた。
「へ?」
肩を叩かれたは、山口の目論見通り振り返った。
すると、あらかじめ用意しておいた人差し指に頬がぷにっとめり込む。
「ふふっ、ドッキリだいせいこー!」
「たっくん!何してんのさ!!」
「綺麗に引っかかったね笑」
「君たちは何やってんのさ」
ヘッドホンを首に掛けながら、月島が近づいてくる。
「たっくんがひどいんだよ!」
が山口を叩こうと伸ばす腕をしたり顔でひらりとかわして、山口は靴を履きに下駄箱へと向かっていく。もう!とは地団駄を踏んだ。
「で?何一人だけ飲んでんの?」
水滴で結露した紙パックに視線を移す。
「あー。これは棚からぼた餅的にもらったのよ」
「誰に?」
月島の声が低くなる。
「んー?なんだっけな?朝転んだ時にいた人。か…なんちゃら山くん。」
そう聞くや否や、ひょいっと紙パックが宙を舞う。
気づいた時には、残りは全て月島の胃に収まっていた。
「知らない人から貰ったものを簡単に飲まないって、知らないの?」
不機嫌な声が降ってきた。