第6章 出会い頭の瞬き
入学式後、ホームルームが終わり昇降口からゾロゾロと新入生たちが出てきた。
その人波に向かっていく在校生たち…部活動の新入生勧誘の始まりである。
体育館の前に特設ステージを組んだ吹奏楽部、凝ったビラを配る美術部、オッス!と道着で型を見せる空手部…何やらカオスな状況だ。各部活趣向を凝らして、勧誘をしている。
はその熱気に圧倒され、昇降口を動けずにいた。
このまま出ていけば、もみくちゃにされてしまう。
「けーくん、たっくんどこ?」
キョロキョロ見渡すも、人垣があり視界が悪い。
人波に飲まれないように、昇降口の端の自販機の前に身を寄せた。
念のため、山口と月島に昇降口で待っているとメッセージを入れた。
「ちょっとそこ、いいすっか?」
不意にかけられた声に、携帯から顔を上げた。
エナメルバック、M字バングの黒髪、そして青みがかった瞳。
声の主は、朝迷惑をかけてしまった男子生徒だった。
口を尖らせて、彼はぶっきらぼうに言う。
は背にある自販機に思い至り、サッと場所を譲った。
「あ、邪魔してごめんなさい。」
「別に謝ることないっす」
そう言って彼は、ポケットから出した硬貨を投入してぐんぐん牛乳を購入した。すると、自販機がピピピピと鳴りルーレットが回り始める。
666…6!!
音楽がなって、自販機のボタンが点灯する。
どうやら、もう一本が当たったらしい。
「お、おめでとう。これ、本当に当たるんだ。」
なんとなく、その場に居合わせてしまったは思わず声をかけてしまった。
「…うす。でも、自分いらないんで、どれがいいっすか?」
何やら、恵んでくれるらしい。なんか、1本欲しいと言ったような構図になっていて居心地が悪い。
「え、でも悪いよ。えっと、何くん?」
「影山」
「…影山くんが飲みなよ」
「2本は多いし、荷物になるんで」
「じゃあ、いちごミルクで」
「うす」
やたら断るのも失礼かと思い、はそうリクエストした。
影山はガションと落ちてきた商品を取り上げて、渡してくれた。
「じゃあ」
「あ…ありがとう」
何やら、棚からぼた餅的にいちごミルクを手にしてしまったは、パックにストローを通しながら幼馴染達の帰りを待つのだった。