第5章 懐古と芽生と安らぎと
着いた先は小学校の体育館だった。
「なっつかしーーーー!」
は駐車場を出るとあたりをキョロキョロしている。
先に降りていた明光は、三人が降りたことを確認するとリモコンキーで車を施錠する。
「おー!月島来たか!」
体育館の中から、快活な声が聞こえた。
よっと、片手をあげて挨拶をする男性は黒いTシャツの袖を肩が見えるまでたくし上げている。
「島さん!連れて来ましたよ!助っ人3名!」
「おーー!助かるぜ!おっと、そっちの眼鏡のっぽは蛍か??」
縦にニョキニョキ伸びやがって!うりうりと、
あっという間に近づいていた男性…島さんは歯を見せて笑いながら月島の頭をこれでもかと言うくらいにぐちゃぐちゃにした。
「ほんっと、やめてください。」
心底嫌そうな顔をした月島は顔を背けて、手を突っ張って逃れようとするも虚しく、島さんにあっけなく肩を組まれてしまった。
「あのツッキーがいいようにされている。」
「けーくん笑笑」
山口とは思わず苦笑してしまった。
「こっちのお二人さんはどちらさん?」
嫌がる月島を引き連れて、島さんが二人を振り返る。
「蛍の幼馴染ですよ。」
明光が二人の肩に手を乗せて紹介する。
「山口忠です」
「です。よろしくお願いします。」
「おー!礼儀正しいねー!何処かの誰かさんと違って」
「チッ」
「まあまあ。うちの可愛い蛍、そろそろ返してくださいよ。」
あからさまに月島を煽る彼に、明光も呆れて助け舟を出した。
島はちぇっ、もう少し蛍で遊びたかったとこぼしながら渋々月島を解放した。