第5章 懐古と芽生と安らぎと
が帰ってきてからと言うもの、山口、月島は毎日のように顔を合わせていた。
…と言うのも、始まりはが二人に課題を手伝ってくれと泣きついたためである。
はオーストラリアでは現地の高校に通っていたため英語で勉強をしていた。高校に入学するに当たって出された事前課題を日本語でこなすには、まだサポートが必要な訳で。
数学の基礎計算は問題ないものの、文章問題となればからっきし。
辞書や、山口、月島の噛み砕いた日本語によってやっとのこと理解して問題に齧り付いていた。
その課題に取り組むに当たって、判明した新事実。
… がキャリーケースから出してきたのは、見覚えのある封筒で。
も烏野に進学することが分かったとき、月島と山口は目を丸くした。
「へへっ。唯香さんに二人が烏野受けるって聞いてこっそり受験してました!」
…と言っても、帰国子女の特別枠での入試で、英語での論文と内申点によって合否が決されるものだが。
「やったね!ツッキー!学校でも一緒にいられるね!」
「別に隠さなくても良かったんじゃないの?」
「もし、落ちたらかっこ悪いじゃんか!」
ぷうっとむくれるの頬をツンと突く月島は、子供が面白いおもちゃを見つけたような顔だった。
そうこう言っているうちに、3日が過ぎた。お決まりの場所は山口家のリビングで、はいわゆるお誕生日席に陣取っている。右に月島、左に山口である。
朝10時から、始めたこの勉強会も昼休憩を挟んで現在15:00過ぎ。
そろそろ酷使した脳が糖分を欲してくる頃合いだ。
最初に音をあげたのは。シャーペンをポロンとワークの上に放り出し、「やめだやめだー!」と叫んで後ろにのけぞった。
「ちょっと!人に教えてもらっといて、その言い方はないんじゃないの?」
月島の容赦のない“口撃”がを襲う。
「ぐっぬぬ。」
「まあまあ、僕らも休暇しようよツッキー!」
二人の間に入って、フォローを入れる山口は流石である。お茶でも淹れようと彼が席をたとうとしたとき、
ピンポーン
と呼び鈴が鳴った。